高揚と恐怖

高揚と恐怖

僕にとって天然菌の糀造りは高揚だった。
自分で採取した天然菌をお米につけると発酵して糀になる。甘酒にすると甘くなり、塩麹にすると旨みに溢れ、味噌にすると今までに飲んだことのないようなお味噌汁に仕上がった。毎日毎日菌のことを考えては採取して、糀にしてを繰り返していて、どんどん味噌屋としての仕事が楽しくなってきた。
そして天然菌を扱い出して昨年の秋くらいから天然菌の糀をオンラインストアなどで載せると、興味のある方が多くて結構な量が毎週動いてる。それはうれしいことだし、自分の喜びをお客さまと共有出来ることはとても励みになった。

ただ年を明けてから糀造りに2回失敗している。失敗という言い方は菌に対して大変失礼なのかもしれない。ちゃんと糀になっているし、その糀を使って甘酒を作ってもちゃんと甘くなる。菌はしっかりと仕事をしてくれているのだが、色、菌糸の張り方、香り、温度経過、全てにおいて良い状態の時の糀と違うのだ。良い状態を知っている以上はそれ以下のもの(それ以下というのはあくまでも人間目線です)をお客さまに送るのは、造り手として出来ない。中途半端なものは出したくないし、お客さまに天然菌を魅力を最大限に感じて欲しいからだ。

良いときの糀 黄麹ならではの胞子が出て香りが甘い


使う菌の種類、量、やり方は同じでも全く様が異なる糀に仕上がってしまい、驚きと同時に天然菌の難しさに直面している。この一年ほど安定していただけに、何がこうさせるのかが検討がつかない。目に見えるところでの変化はないので、空間、気持ち、環境なのか、とにかく今は模索している状態。

胞子が出ていなくて、菌糸の張りも弱い。香りも甘さがなく、若干の焼けた香りがする

オンラインストアでも、あらかじめ予約数を聞いて、それに沿って製造量を決め、出来上がりの日に発送しているが、この失敗した2回はそれぞれのお客さまに連絡を取り、造り直し、発送の遅れを承諾してもらえた。
今までは自分の好きなタイミングで造っていた天然菌が予約日に必ず仕上げて出荷しないといけないので、この失敗から最近は糀を造るのが少し怖い自分がいる。
仕事をする以上はある程度の緊張感が必要だが、目に見えない世界で、同じやり方をしていても失敗している過去の経験から、糀造りをしてお客さまと向き合うのが少し怖くなっている。
それでもそれを理解してくれる温かいお客さまがいて、それが心の支えで励みになった。

また菌たちが僕に訴えかけている合図だと思う。もっともっと謙虚に菌に向き合い、天然菌により真摯に付き合っていこうと思う。

※オンラインストアから糀を購入される場合、上記の理由により発送が遅れることがあります。それは多くの方に天然菌の魅力を伝える為、妥協せずに最善の糀をお届けしたいからです。ご理解の程、宜しくお願い致します。

より小さく、個性を活かした味噌造り

より小さくて、より個性を活かした味噌造り
天然麹菌が醸す、多様性な味噌

年が明けて今年は今まで以上に糀造りに追われている。冬の風物詩でやっと忙しくなってきたなぁと思っていたのは束の間で、最近は慌ただしい。それでも天然菌と濃厚な時間を過ごしているので、これはこれで幸せな時間だ。
その代わり、糀造りに追われていてお味噌が仕込めていない。自分たちの味噌を仕込みたい気持ちもあるが、年に一度の味噌の仕込みを楽しみにしている方の事を想うとそうは言っていられない。お味噌をお届けするのも大事だが、糀をお届けすることも大事。自宅での味噌造りは、一年間分のお味噌を造ること。それは家庭にとって大事なことなので、僕にとってもうれしいこと。その役割を全うしたい。

年明けからお味噌の欠品が徐々に始まります。
以前にブログでもお話したように、菌たちが巡り合わせてくれた農家さんのお米や大豆を使いたいので、安定的なお味噌の供給が出来ません。それでも出会ってきた農家さんたちのものを使いたくて、それを使わないと天然菌も喜ばないので、その年に収穫できた分だけをお味噌にしていこうと思います。

天然菌で醸した糀やお味噌を造っていると、自然と素敵な農家さんたちと繋がれたりします。必要以上に自分で探すのではなく、自然と出会う。菌たちがそんな農家さんを求めていて、僕と引き合わしてくれていると思っています。だから、そんな農家さんの造るお米や大豆は天然菌がうまく醸してくれる。天然菌は目に見えないからこそ、目に見えないところの方が大事だと思っている。
天然麹菌は在来種の作物が好みで、人がなるべく操作していない、古い品種のお米がうまく醸してくれる。菌が巡り合わせてくれる農家さんは自然栽培の在来種を作られている方が多い。菌も人を選んでいるんだなぁとつくづく思います。

また天然菌でお味噌を造り始めて感じるのは、お米と大豆の距離。同じ農家さんが造られるお米と大豆でお味噌をするのが天然菌にとっても一番醸しやすく、また食べてくれる人にとっても一番美味しい状態に持ってこれる。同じ農家さんでなくても、同じ地域で造られたもの、その距離感を大事にしていきたい。遠く離れた地域の原料を掛け合わせるのは人の目線であって、天然菌にとったら違和感を感じている。お味噌にしたときの一体感が生まれて来ないのだ。

そうなってくると一農家さんが造られるお米と大豆(そもそもお米と大豆の両方を自然栽培で作られている農家さんはとても希少)は少量になってくる。なのでお味噌も少量しか仕上がりません。欠品が続いてご迷惑をかけるかもしれませんが、それこそが天然菌たちも喜び、またその味噌を食べてくれる方にとっても一番喜んでもらえるものだと思っています。今後も少量ながら、ご縁に恵まれた農家さんのお米や大豆を天然麹菌で醸していきたいと思います。

より小さくて、より個性を活かした、天然麹菌に寄り添う味噌造りをしていきたいと思います。

※只今欠品中のお味噌

・米みそ 自然
・白みそ

米みそ自然は次のロット分の熟成待ちです。2月の下旬~3月上旬を予想しています。

白みそは2月の中旬を予定しています。

あと1~2ヶ月くらいで欠品になるお味噌
・米みそ 若桜
・麦みそ

米みそ若桜は欠品したら半年近く待ってもらうことになりそうです。麦みそは原料の大麦が少ないので、どこかで供給が出来なくなると思います。

お手数おかけしますが、ご理解の程宜しくお願い致します。

禾/kokumono

禾/kokumono

天然麹菌×自然栽培で仕込んだ『米みそ自然』の原料は、以前のブログで紹介した蒜山耕藝さんの自然栽培×在来種(山陰の在来種”亀治”)と、今回紹介させて頂く禾/kokumono さんの自然栽培大豆を元に仕込んでいます。

お米も作られている。禾/kokumono のこんちゃん


この禾さんが作られている大豆は変な雑味が無く、大豆本来の香りや旨味と甘味も強く、同じ蒜山の産地だけあり、蒜山耕藝さんのお米との相性がいい。何より当店の天然麹菌の一部は蒜山耕藝さんのお米を元にして採取しているので、同じ蒜山の大豆とは相性が良くなる。またそれが氷ノ山の天然水と沖縄の海水塩と重なりあって、より美味しく仕上がっている。

無肥料・無農薬の自然栽培大豆


そもそも自然栽培の大豆というのは作られている農家さんが極めて少ない。国産の大豆ですら少ないのに、自然栽培の大豆はほとんど市場に出回らない。そんな大豆がないと、味噌や醤油は出来ない。日本がずっと受け継いできた食を残す為には大豆についてもっと考える必要がある。僕たちも自ら大豆を自然栽培(手植え、手刈り)をしているので、大変さはよくわかる。同年代の農家さんで大豆を作られている禾さんが近くにいることはとても心強い。

旨味と甘味がぎゅっと詰まった自然栽培大豆

禾さんは蒜山耕藝さんで研修され、2019年に独立されて、若いご夫婦でされています。仕事以外でも家族の付き合いをさせてもらっていて、そんな禾さんからはいつも刺激をもらっています。

当店の『米みそ自然』は蒜山の素敵な農家さんによって造られている特別な味噌になります。蒜山耕藝さんのお米や、禾さんが作られる大豆も毎年一瞬で売り切れてしまいます。それを僕たちの味噌造りに使わせてもらっているのでうれしく思います。

田んぼも見させてもらったが、自分の圃場の話が止まらない。圃場への愛情を感じされられた。

また来年以降には自然栽培の大麦を作ってもらう予定になっています。蒜山の清らかさ自然と禾さんのお人柄から産まれる大麦が楽しみで仕方ありません。

近くの小川でお米を発芽させている


また禾さんとは去年から一緒に新しい企画をしていて、これも出来次第報告させて頂きます。

禾のホームページも是非ご覧になってください。おそらく食べ物はsold outですが、禾さんの考え方や想いが伝わります。