天然麹菌(野生麹菌)と一般麹菌のエサの好み

天然麹菌(野生麹菌)と一般麹菌のエサの好み

大麦を醸す、天然麹菌FWH1号

天然麹菌を扱いだして、彼ら(菌)の好みがわかってきた。面白いのが天然麹菌は自然栽培のお米と天然水が好みで、そこにめがけて降り来てきて繁栄する。しかし、その天然麹菌でお米を糀にしようとすると中々簡単には糀になろうとしない。一般菌はお米を糀に変えるのに長けていて、その為に化学的培養された、いわゆるスペシャリストだ。しかし、天然麹菌(野生麹菌)は細々と自然界で生きてきて子孫を残してきた。
『※個人的な研究で天然麹菌はお米(稲)以外にも自然界に存在して、子孫を残しているだろうということがわかってきた。この事についてはまた書きたいと思う。ちなみにこの天然菌も遺伝子検査で毒性が無いことも判定済み』

まして彼ら天然菌はお米を糀に変えるなんて経験したことないだろう。そもそも糀て何だ?俺たちはお米なんてなくても生きていけるよ、というレベル。野生の麹菌にとってお米は1つのエサに過ぎないのだ。ただ大好物なのは間違いない。

なので、多くのエサの中でたくましく育った天然麹菌の糀や味噌は複雑であり、味わい深い。狭い空間の中、単一飼料で育った牛のお肉は脂身があって美味しいのかもしれない。ただその味は単一で飽きやすい。自然界で放牧されたお肉の方が脂身こそは少ないが、美味しく長く食べられる。この単一と複雑の差はとてつもなくでかい。

話を戻すが、一般菌は自分たちで勝手に醸してくれるとに対して、天然麹菌は人と共に醸していかないと糀にならない。ところが今週は麦みそを仕込む予定で、初めて天然麹菌で大麦を糀にしている。そこで知ったのは一般菌よりも天然麹菌の方が大麦に限っては発熱も早く、菌糸の延びが早い。温度を下げても下げても上がってくる。胞子を出すのも早い。大麦は比較的に一般菌を使ったときも温度は上がりやすいが、天然麹菌はそれ以上だ。
お米に降りてきてくれる天然麹菌がお米よりも麦を好んでいるのかもしれない。彼らにとってお米とは?麦とは?もっと君たちのことを知りたい。もっと仲良くなりたい。彼らからの聞こえない声を五感で聞こえるようにしたい。

出来上がった麦麹 天然麹菌ならではの黄色の胞子を出すかわいい彼ら

プラスチックフリー ”竹皮”の可能性

プラスチックフリー
プラ容器の代替は”竹皮”

竹皮にのせた玄米みそ
皮を開くと味噌の芳ばしい香りが漂う

最近は当店のお味噌を取り扱って頂いている販売店さんに量り売りのお店が増えてきています。欧米では ”Bulk Shop”(バルク・ショップ)と呼ばれ、パッケージなしで商品を販売するスタイルが話題になっています。
実はこのスタイルは日本にも昔からあって、日本では量り売りと言います。お味噌屋さんも本来は量り売りが主体でしたが、現状は出来上がりの商品を並べるだけになっています。当店も事前にタッパや桶などを持ってきてもらえたら、詰めて用意致しますので、何なりと仰ってくださいね。

この状態で発送します

プラスチックフリーを生活に取り組んでいるお客さまからの問い合わせも増えてきています。そんな方のおかげで色々と気づかされることがあります。以前にプラスチックフリーでお味噌が欲しいと言われ、何か自然に還り、なおかつ味噌が漏れないものはないかなぁと考えていたら、竹皮が思いつきました。
そう!竹と天然麹菌の相性が良いのは採取の時に気づいていた。てことは、竹皮と味噌の相性は良いに決まっている!竹皮には防腐効果もあり、他の雑菌を寄りにくく、保存にもきく。そのまま冷凍もできて、レンジも対応する。食品を”包む”ことに関したら最高の素材なのだ。また味噌が漏れることもない。何といっても裏山にいくらでもある。
これで実際に送って問題ないか、お客さまに合意の元で送ってみた。そしたら、漏れることもなく、品質も維持したままでお客さまにも満足して頂けた。お客さまの問いかけや疑問は僕にとって新しいことに取り組むきっかけになっていて、今回の事はお客さまの言葉無しでは出来なかった。感謝です。これからもどんどん疑問を投げ掛けて欲しいし、その都度対応して前に進んでいきたい。これこそ小さな商いをしている身軽さの特権だ。

プラスチックフリーを意識している方たちは世の中にたくさんいると思う。スーパーの商品はほぼプラスチックの容器、袋に入っている。食べたくても我慢している方もいるはず。そんな方は注文の際に一言仰ってください。当店は荷物の配送の際にプラスチックの代わりに竹皮でお味噌を送ります。身近で出来る範囲から、今ある資源を維持していきましょう。ただ竹皮に入る味噌の量に限界(一皮あたり500g)があり、竹皮の枚数にも制限があります。次の春には大量に採取したいと思っていますが、全てのご希望数には答えれないかもしれません。それでも少しずつ、少しずつ。ご希望の方はご連絡ください。

写真は近所の友人に撮影してもらった
近くに同世代の仲間がいるのは心強い

自然が醸す、無添加非加熱の味噌
藤原みそこうじ店

美味しいとは

地方で仕事をしていると、近所の方達の声が嫌でも聞こえてくる。それが良いところでもあるが、たまに気を落としてしまうこともある。例えば、「美味しくない」という声を人伝えに聞くことがある。造り手として落ち込むこともあるが、あまり気にしないようにしている。ナショナルブランドのように万人受けするような味をそもそも最初から造っていない。自分の造りたいもの、造りたい味に少しでも近づけるようにしていて、それに後から周りが共感してもらえたらと思っている。自分の味覚こそが判断基準で、自分こそが一番のファンでありたい。

若桜に流れる八東川

天然麹菌(野生麹菌)の採取に取り組んで、当店のお味噌もなるべく天然麹菌に切り替え始めている。市販の一般麹菌は優秀で甘み、旨味を出す力は申し分ない。天然麹菌の魅力は複雑的な味わいと、この場所でしか採れない為、この場所でしか出せない味に仕上がる。味だけを見たら一般麹菌の方が良いのかもしれない。美味しさだけを基準に考えると…少し不安に思う自分がいた。これは自分のエゴなのかもしれない。また周りから「美味しくない…」の声が聞こえてくるかもしれない。
そんな時、たまに足を運んでいる智頭町のパン屋・タルマーリーの渡邉格さんと立ち話をしているときにこの話をしてみた。そしたら『美味しくなくてもいいじゃん。それでも僕は買うよ』と仰ってくれた。

救われた一言だった。そうか、美味しくなくてもいいんだ。もちろん美味しくなくてもいいなんて開き直っていないが、それでも気持ちは軽くなった。同じ「美味しくない」でも、本質をわかってくれている人の言葉と、顔も見たことがない知らない人の「美味しくない」とでは全く異なる捉え方だ。

糀と大豆を合わせる

そもそも「美味しさ」とは何なんだろうか。その土地でしか味わえないもの、その時期でしか味わえないもの、少し前には当たり前のようにあったはずだ。食のグローバル化が進み、流通や資本が豊かになって、何でも手にはいるようになった。それが果たして本当の美味しさなのだろうか。その反面、土地に根差していた食文化が廃れてきている。天然麹菌と人の関係性も少し前まで共存共栄してきた。その土地の「美味しさ」はその土地でしか出せない。
多くの人に理解はされないかもしれないが、こうやって理解してくれる人もいる。この人たちだけを喜ばせれるそんな味噌を作っていきたい。万人受けするような味噌ではなく、良き理解者たち、何より菌たちが喜ぶような、そんな味噌造りが出来たらと思う。

今年収穫した若桜町産 無農薬六条大麦

自然が醸す、無添加非加熱の味噌
藤原みそこうじ店