大麦

こんちゃんの大麦畑

今年度から新しいお味噌を仕込もうと思っている。長年仕込みたいと思っていた麦みその自然栽培×野生麹菌だ。
お米の自然栽培は少しずつではあるが、栽培している農家さんも増えてきている。その中でも希少なのが、自然栽培の大麦。

僕たちが移住2年目から作っている『麦みそ恵み』は地元若桜町の米農家さんに無理をお願いして無農薬で大麦を作ってもらった大麦で仕込んでいた。こちらの要望で無農薬栽培をお願いしたけど、年を重ねる毎に収量も下がり、作り方の変更なども視野に入れて何回も話し合った結果、大麦の栽培を断念せざるを得なかった。
農家さんにも生活があり、それでも数年間こちらの想いに答えてくれて無農薬で大麦を作ってくれた農家さんには感謝しかない。

麦みそは不思議なお味噌で、野生麹菌で仕込む度に麦麹の顔色が違う。もちろんそれは米糀で言えることだが、麦麹の場合は顕著に表れる。麦はケカビとの相性も良いので、少し間違えるとケカビだらけの麦麹になってしまうし(ケカビの麦麹で仕込んでも美味しい麦みそに仕上がった)、麦麹の色合いが白かったり、黄色かったり、緑だったりと様々だ。最近は白色に落ち着いている。それでも変化が激しいので、造るのが難しい。その自由に変化する麦みそに可能性を感じている。麦みそは九州、四国などの暖かい地域のお味噌なので、鳥取で作っても馴染みがないが、色んな変化を見せて、味わせてくれる麦みそに僕が魅了されているのだ。

そんな経緯から大麦を作ってくれる農家さんを探していた。いつも素敵な農家さんに会うときは無理やり探すのではなく、菌が自然と繋げてくれる。
そんな時にいつも仲良くしたいる蒜山の農家『禾/kokumono 』のこんちゃんにお願いしてみた。今までの経験から米農家さんに大麦を作ってもらうことが、どれだけ大変なことなのか知っていた。米作りの繁忙期にある大麦の収穫作業、市場での価格(米に対して低価格)、まして自然栽培で作ってもらうので収量の低下などのリスクもある。
それでも快く頷いてくれたこんちゃんには本当に救われた。こんちゃんには頼りっきりで他にも米や大豆なども作ってもらっていて、僕たちにとって公私ともになくてはならない存在だ。

黄色く仕上がった麦麹

そんなこんちゃんに作ってもらった大麦の収穫が昨日から始まった。夢で何度も出会ったこんちゃんの大麦に現実で会えるのが楽しみでならない。
この大麦で『麦みそ自然』を仕込もうと思っている。他にもこの麦をベースにいくつかお味噌を仕込みたいと思っている。
こんちゃんとの仕事はいつも何年もかけてのペースだが、その時間の流れが心地良い。このお味噌が出来たら一番にこんちゃんに届けてみよう。

田植え

田植えの朝を迎えた。気になって夜明け前から待っていた

田植え

米作り2年目の田植えを向かえました。
昨年より10日ばかり早く播種をしたけど、寒さの影響や苗田作りの失敗で、中々苗が大きくならず、結局昨年と同じ時期の田植えになりました。昨年よりも苗の元気がないので、どうなるか心配です。昨年はイモチにかかりつつも、何とか成長してくれて、その生き延びてくれたお米の種を繋いでいます。昨年のイモチが今年どう影響するのか心配ですが、その辺りも含めて姿を見届けたいと思います。収穫よりも菌が降りてきてくれるのは田んぼ作りが大事で、昨年のイモチが菌とどう関係するのか、その辺りも観察したいです。

苗がまだ小さいけど梅雨に入る前に田んぼに移す

今年の春先から野生菌の採取を試みて、昨年収穫したお米に野生の菌たちは無事に降りてきてくれました。自分たちで耕した田んぼに自分たちで育てたお米に、その地に住んでいる野生菌が降りてきてくれるのは、始めてその地に迎え入れてもらったようなうれしい気持ちになりました。
今年収穫したお米にも、またこれからも菌たちと共存できるような、そんな暮らし方をしたいと思います。

今年も帰ってきてくれたツバメたち

祈り

日々の仕事に追われて、長い間ブログを書くか事がでなくて、久しぶりの投稿になります。
この一年は新たな農家さんに出会うこともあって、またいくつかのお味噌を仕込みました。その辺りも追々、書けたらなぁと思っています。夏前には新作のお味噌を販売予定です。

今年も田んぼをしています。昨年、蒜山耕藝さんから頂いた『亀治』という品種でお米を作り、今年も種を繋いでいます。昨年はイモチにかかり心配しながら見守って、手探りしながら何とか収穫まで漕ぎ着けて、圃場の3反に対して約350kg程収穫出来ました。とても少ない量ですが、私たちが田んぼに向き合い、お米が育ってくれたこと、それは言葉では表せないほどの感動でした。春から秋にかけて見せる田んぼの風景はそれぞれに魅力が溢れていて、初々しさ、逞しさ、日増しに成長するお米に愛しさを感じる毎日でした。それと同時に農家さんの偉大さが改めてわかりました。今までに当たり前のように使っていたお米や大豆の重みを痛感させられ、お味噌に使わせてもらえるありがたみを感じられました。

また、そのお米に向けて降りてくる菌の気持ちも少なからず理解も出来ました。

そんな私たちが使わせて頂いている圃場ですが、10年近く使われていない、いわゆる耕作放棄地でした。圃場の持ち主に話を聞いてみると、過去に使われていた方がいて、その方は40年程無農薬で作られていたそうです。戦後の食糧不足の時代に農薬、肥料が当たり前、収量をあげることが正義の中、周りからヤジを飛ばされながらも無農薬を続けていたそうです。
そんな彼らは毎朝決まって無事に収穫どきるよう太陽に向かってお祈りをしていたそうです。自然を尊い、自然に想いを託している姿は当時も人には理解されず、それでも毎日続けていたそうです。

僕も天然菌に向き合うようになって、目でみることの出来ない菌の世界は、目に見えないものを信じる十分なきっかけになりました。お米が無事に育ち、収穫できるように自然の神にお祈りするのは必要な精神だと思います。そもそも、肥料も農薬もしていないので、僕ができることと言えば除草と見守る(祈る)ことぐらい。

名前も知らない人が何十年も守ってきた圃場は僕たちを待ってくれていたかのような、そんな思いになりました。移住して4年目にお米を作ろうと思えて、この圃場に巡り合えたのが、奇跡に思えました。

これからも菌たちが気持ち良くこの場所で生きていけるよう、そんな田んぼにしていきたいと思います。僕たちも太陽、山々、水、田畑、稲、菌に畏敬の念を忘れず、お祈りしていけたらと思います。