麹篩(こうじふるい) 竹と天然麹菌の関係性

特注で作ってもらった麹篩(こうじふるい)

麹篩(こうじふるい) 竹と天然麹菌の関係性

糀を造る時に、蒸し米に麹菌を篩う作業があります。これを『種付け』と言います。醸造業界ではこの種付けの作業をほとんど機械にて行っています。機械ですることによって、麹菌がまんべんなく蒸し米に付着して、均等に良い糀に仕上がります。その陰で使われなくなったのが、『篩う(ふるう)』という言葉。


本来、種付けは篩いにかけて作業していました。当店も篩いを使い種付けをしています。菌たちが蒸し米に向かって降りていく姿はとても神秘的です。近代化に伴い、作業効率だけを重視している現代のやり方では、菌たちと触れ合う機会があまりにも少ないです。種付けも機械、手入れも機械、温度管理も機械、充填も機械とすべて機械任せ。菌も生き物なので、もっとかまってあげないと愛想を尽かされます。効率化を計れば計るほど菌と関わる時間は減り、菌を知ろうとすることもなく、技術の低下に繋がり、味にも繋がります。

左右に振って、竹の網目から菌の胞子を落とす。この光景が神秘的

また市場にある多くの篩いは金網のメッシで構成されています。漢字を見たらわかるように篩いという漢字には竹冠が使われています。古来から竹と菌がいかに密接にあったことがわかります。当店が採取している天然麹菌も、採取する際に受け皿として竹を使用していますし、保管にも使用しています。またプラスチックフリーをご希望の方には竹皮で包装しています。竹は他の雑菌などを寄せ付けないので、天然麹菌との相性がとても良いんです。

そう思うと天然麹菌にも竹の篩いを使って、気持ち良くお米を醸して欲しい。菌たちの為に竹の篩いが欲しい。竹の篩いから降りてくる菌たちの働きを見てみたい。そんな想いを形にしてくださったのは、伍竹庵さん。職種は違えど、竹と天然菌と関係性について理解があり、僕のお願いを快く承諾してくださり、形にしてくれました。麹菌を篩う際の動作などを話して、最も使いやすく、また菌目線で作ってくれました。

制作に3~4ヶ月かかった。職人さんの想いを菌に繋げる役割を担いたい


伍竹庵さんは竹を使って、あらゆる手仕事の素晴らしい道具を作られています。失われつつある竹細工の道具たちを日々の暮らしに取り入れると、より暮らしの本質が見えてくると思います。生活の中がもっと竹に囲まれると菌たちも喜ぶ世界になるんだろうなぁ。

竹と菌が織り成す、自然が醸すお味噌、どんな味に仕上がるか楽しみです。
いつも無事に降りてきてくれる天然の麹菌たちに感謝の意をこめて、竹の篩いをプレゼントしました。彼らは喜んでくれるだろうか。気分よくなってくれただろうか。また来年も降りてきてくれるだろうか。
一歩一歩、菌たちに寄り添い、菌たちにいい仕事をしてもらいたいと思う。それが僕の仕事にも繋がり、みなさんに美味しいお味噌や糀をお届けしたいと思います。

落ちそうで落ちない、落ちなさそうで落ちる、絶妙な網目。職人さんの技術には感服しかない

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