アレルギー

自然栽培 花豆

アレルギー

少し前から一人のお客さまとやり取りしている。その方はあらゆる食物アレルギーに悩まされていた。いつも懇意にしている販売店さんのお客さんで、今まで食べれていたお味噌が近年から食べれなくなって、相談にしたら当店を紹介してくれたそうだ。お味噌に悩んでいる方を当店に紹介してくれるのはうれしいし、何より本当はお味噌が好きなのに、食べれない人がいるのは味噌屋として何としても食べれるようにしてあげたい。味噌の仕事に携わってから味噌嫌いな人は居ても、味噌アレルギーは聞いたことなく、出会ったこともなかった。何かに背中を押さえたような感覚になった。僕が味噌屋になったのは少しでも味噌の魅力を伝えて身体の芯から喜んでもらえることだ。大きい会社では対応できないことこそ、小さな味噌屋が出来る利点だ。しかも最後の最後に当店に頼ってくれたこと、大袈裟かもしれないが、それは僕に与えられた使命だと思えた。僕はそのお客さまの為に、そのお客さまだけの味噌を造ることにした。

まずはお客さまと何回もやり取りをして、現状の確認をした。なぜ食べれなくなったのか?
どんなものなら食べれるのか?
お米は食べれるか?大豆は食べれるか?
色々と話を聞いているとお米は品種改良された現代の品種は食べれないそうだ。在来種でなるべく品種が古いものがいいそう。ただ現在はそれらのお米も食べれないと言われた。ただお味噌はお米がなくても造れる。そう。お味噌の中でも最も歴史の古い『豆みそ』だ。僕たちは豆みそを造ることになった。

豆だが、まず最初に思い浮かんだのが農薬のこと。そのお客さまがお味噌を食べれなくなった原因は原料の農薬にあるのではないかと思った。当店は自然栽培(無肥料・無農薬)の原料も扱っているので、その自然栽培大豆を送って食べてもらった。そこにある程度の期待を持っていたが、結果は食べれなかった。同じ自然栽培でも品種の相性が良くなかったのか、はっきりとした理由がわからない。それで原料の大豆はお客さまに用意してもらうことにした。

蒸しても表皮が硬かったので、菌糸が張りやすいように手で潰したり、包丁で割った

麹菌でも同じことが言える。味噌に限らず市場に出回っているほとんどの発酵調味料は化学的に培養されている麹菌から造られている。身体に敏感な人からするとアレルギー反応が起きても不思議ではない。天然麹菌はそんな人たちを助ける救世主になりえると期待してきる。

種付けから24時間後。天然麹菌はちゃんと醸してくれた

何日か経ってからお客さまから連絡があった。見つけてきたのは自然栽培の『花豆』だった。正確には「ベニバナインゲン」といって江戸時代の後期に日本に伝わったそうだ。冷涼な気候を好み、長野県などの一部でしか栽培されていないそう。数多くある豆類の中で花豆を味噌に変えている方はいるのだろうか。僕は色んな概念を壊さないと出来ないだろう今回の味噌造りに、すごい好奇心を抱いている。

種付けから30時後 黄緑色の胞子を少しずつ出そうとしている

塩も僕の知っている限りのものは駄目で、お客さまが用意してきたのは、長野県の山奥にある温泉から極少量しか採取できないという温泉水から出来たお塩だった。
これで材料は整った。本人が食べれる豆と塩に自然界で採取した天然麹菌を使えば、お客さまの身体にアレルギーは起こらないだろうと予測している。これら全ての原料に化学的な要素は一切ないので、後は天然麹菌に任せようと思う。

種付けから36時間後

いつも使っている当店オリジナルのFWH天然麹菌1号はお米から採取しているので、もしかしたらお客さまにアレルギー反応が起きるかもしれないので、今回は植物から採取した天然麹菌2号を使用する。

種付けから50時間後 周りにしっかりと胞子をつけてくれた。食べてみるとほのかに甘く、花豆の旨味もしっかりとあった。仕込みに入る

花豆は周りに硬い表皮がある為、そのまま菌をかけても菌糸が張らない。なので手で潰したり、包丁で切り目を入れて種付けした。

今回の例のように、お味噌が好きだけど普通のお味噌は食べれないという方や、どうしてもこの原料で自分だけのお味噌を造って欲しいという方はご相談に乗ります。お味噌のことなら駆け込んでください。何としても食べれるお味噌に仕上げれるよう最善を尽くします。日本人がお味噌を食べれない世の中だけは絶対に嫌だから。

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